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コーポレートガバナンス4:独裁か、英雄か

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今日はドイツ銀行がいかにして機能不全に陥ったかを見ました。もともと商業銀行としてドイツの誇りであったわけですが、株主からの期待や、ウォールストリートとの競争激化、金利低下、経済状況悪化などなど、いろんな要因があって、「アメリカみたいな投資銀行に生まれ変わるぞ」と、構造改革を実施しました。

上手くいけばよかったのですが、うまく行かなかった。構造改革の過程で、リスク管理がおろそかになり、旧文化(商業銀行)と新文化(投資銀行)の融合につまづき、取締役会が機能しなくなり、と、いろんなことがダメになりました。ケースではいかにダメになったのかを強調しているので、全部がダメになったというお話が語られていました。

その後の議論では、何が悪かったのか、に焦点が移るわけですが、ケースで描かれた、傲慢で強欲なトップマネジメントについて考えました。まあ、傲慢で強欲なキャラクターに描かれていたわけですが、この人がこの構造改革をうまく成功させていれば、このケースはこの人の英雄物語になったことでしょう。でも成功しなかったので、いかにダメな人物がドイツ銀行を率いていたかという風な説明がケースには描かれました。

英雄、というワードが出まして、「Hero Problem」なる考え方が紹介されました。これは、企業統治不全に陥る兆候として考えられており、一人の人物が複数の重要なポジションにいたり、その人が発言すればだれも何も言えなくなったり、議論の余地がなくなるような状況のことを指します。日本語でいえば、「ワンマン」とか「独裁」という感じです。

でもこの問題の難しいのは、だいたいそういうことができる人物ってのは、恐ろしく有能である場合が多いことです。我々の実生活でも程度は違えど、同じでしょう。「〇〇さんが言うなら間違いない」という信頼が、いつの間にか「〇〇さんが言うと誰も口をはさめない」に変化する。権力が怖くて何も言えなかったり、思考停止になる。これって、普通のことですよね。でも、その判断がうまく行くこともあるし、うまく行くように力技でねじ伏せる実力も、その人は持っていたりします。

そういう機能不全に陥るとき、組織はどういう状態になっているか。「Opaque Business Models」という考え方があり、これは機能不全に陥る組織の兆候を、仕組みの点から解説しています。顕著なのは「そのビジネスのことを誰も知らない状態になる」です。いやいや、そんなのあり得ないだろって思うかもしれませんが、意外と結構あると思いますよ。

例えば基礎研究の社内組織を廃止して外部のベンチャーとパートナーを組む。すると、知らない技術や会社ばかり。どうやってそのパートナーを探せばいいのかもわからない。わからないからそういう仕事をしてきたプロを雇う。そのプロが「これが正しいです」といえば「そうか、よくわからないけど、プロがそういうなら任せるか」となって、よくわからないものに投資して失敗する。ありそうですよね?

例えば現行の事業が行き詰っている。M&Aをやって事業構造を転換しようとする。でもこれまでM&Aをあまりやってこなかった。そこで投資銀行に相談する。すると「こんな案件がありますよ」と打診を受ける。自分で考えた案件じゃないから100%の理解はできない。でも何となくはわかる。そこで「時間もないし、やってみないとわからないし、やってみよう!」で買収して、うまく行かなくなる。ありそうですよね?

コーポレートガバナンスのリスクは、あなたのすぐ隣にいる。そう思いませんか?盤石だと思っていたことが、気づいていないだけでダメになっている。良かれと思ってやったことが、悪い結果に結びつく。だからといってリスクばかりを気にしていたら身動きが取れない。どの程度のリスクをとるのか。そもそもリスクとはなにか。コーポレートガバナンスはコストでもある。そのコストをかけたとしても、長期的な便益がある保証もない。

いやあ、いろんなことに思いを巡らせることができる、非常に深いテーマでした。

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