みんなが嫌な顔をしているコーポレートファイナンスの授業に入りました。そもそもコーポレートファイナンスって何のためにあるんでしょう？
コーポレートファイナンス（教授の説明）
・CEO/CFOにとっての目的：株主価値の最大化のためにどうお金を使うのがいいのかを考えること
・お金の調達方法を考える：お金を金融機関から借りる方がいいのか、株主から資金を注入してもらう方がいいのか
・資産の購入を考える：お金を使ってどの資産を買うべきなのか
・稼いだお金をの使い道を考える：保持するか、他のプロジェクトに使うか、株主に還元するか
・株主への還元方法を考える：配当か自社株買いか
そもそも論で、なぜ株主価値の最大化が最優先なのか
教授と個別に会話をしました。なんで株主価値の最大化が最優先なのか、と。これは米英では顕著で、「誰が会社を保有しているのか＝株主。なら、株主のために働く、でしょう。だってCEO/CFOは取締役会が上司。取締役会は株主。主従関係はっきりしている」。一方で日独では主従の”主”の範囲が広くて、会社はだれのために？については、株主・金融機関・従業員・取引先・社会、という、より広い範囲を考えます。なので、「複数の利害関係者に総合的な恩恵をもたらす」ことを考えます。
株主価値というよりも、企業価値の最大化、ですかね。
社会としての前提が違うので、「株主価値最大化が当然」という前提に違和感を持ちますが、違いは違いで受け入れるのみ。ただ、あえて定義するなら、ファイナンスは企業価値の最大化のための手段、という言い方が言いのだろうと思います。
会計とファイナンスの違い
過去の授業では会計も習いました。今回はファイナンス。この違いは何なのか。一般的には会計は利益を扱い、ファイナンスはキャッシュを扱います。会計は会計基準や経営者の意図によって数値が変わりますが、キャッシュはどう計算しても変わりません。
また、もう一つ大きく違うのは、会計は過去を扱い、ファイナンスは未来を扱うということです。
現在価値と将来価値
ファイナンスがややこしいのは時間の概念を入れるからです。同じ金額でも今日の100ドルと1年後の100ドルは違うよね、と。日本人にとってこれを感覚的にそう感じられない人が多いのは、①日本がデフレで物価が上がらなかったこと、②銀行の金利がほぼゼロだったこと ③投資をする人が少なくて貯蓄しがちだったこと からだと思います。このような社会では、今日も1年後も、お金の価値は変わらないように見えてしまう。
お金が時空を超える
例えば事業を始めるとして、「5年後にこれくらいのキャッシュフローが期待できそうだなあ」と考えた場合、これを将来価値と呼びます。そしてこれを今の価値に置き換えると、現在価値と呼びます。将来価値を現在価値に置き換えるときに使うのが割引率です。逆に現在価値を将来価値に置き換えるときに使うのが期待収益率です。同じものですけど、呼び方が違う。
割引率/期待収益率はリスクの裏返し
リスクが高いものほど割引率/期待収益率が高くなります。これはハイリスク・ハイリターンという言葉と同じ意味です。将来どうなるかわからない確率が高い＝リスクが高いほど、その見返りとして必要なリターンは大きくないといけませんから。
負債コストと株主資本コスト
お金を出してくれるのは誰ですか？金融機関と株主です。なぜ彼らはお金を出してくれるのでしょうか？拠出したお金以上の見返りを期待しているからです。その見返りとは？金融機関にとっては利息の回収で、借りている側（＝あなた）からみると、負債コストと呼びます。株主にとっては配当と株式売却益で、拠出してもらっている側（＝あなた）から見ると、株主資本コストと呼びます。この2つを合わせたものをWACCと呼びますが、これはまた別途。ただ、会社の経営者としては、この2つを返せるだけの利益を上げることが、最低限求められているということです。
経営者の方にとって大事だと思うこと
コーポレートファイナンスは計算式がたくさん出てきて辟易している人をたくさん見ますが、会計やファイナンスを専門としない方にとっては、数式を正確に覚える必要はないと思います。重要なのは、以下のようなことだとだと思います。
・コーポレートファイナンスは企業価値を増やすのツールの一つ
・会計は利益、ファイナンスはキャッシュ
・お金を出している側が期待する利益率＝経営者が最低限達成すべき利益率、という数値の見方がある
・現在価値や将来価値という言葉は、時間の違いによって生じるお金の比較障害を調整している
次回はキャッシュフローとか、正味現在価値とか、サンクコストとかについて考えてみたいと思います。
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