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コーポレートファイナンス6:市場効率性仮説から行動ファイナンスへ

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株式投資をしている方になじみのある言葉が出てきました。伝統的な理論を考えた後で、その矛盾について、行動ファイナンスから考えてみます。

市場効率性仮説とは
現在の株価は、すべての利用可能な情報を完全に織り込んだ上で形成されており、すべての人が同じ情報を持っているので、追加の情報で利益を上げることはできないという考え方です。 つまり、投資家がいくら分析しても、儲かる株式を見つけることはできない、と考えます。

市場効率性の3つの形態
言葉がとっつきにくいんですよね。具体例を入れながら考えてみようかなと。

1.弱度の効率性
定義:過去の価格変動や取引情報が現在の株価にすべて反映されている状態です。
意味:過去の価格データを分析しても、将来の株価を予測することはできません。
例:多くの先進国の株式市場(例:アメリカのNYSE、日本の東京証券取引所)は、過去の取引データや株価の動きがすぐに株価に反映されるため、この状態だとされています。

2.半強度の効率性
定義:世の中で利用可能なすべての情報(ニュース、財務報告書など)が株価に反映されている状態です。
意味:世の中にに出ている情報を使って株で儲けることはできません。
例:スウェーデンやオランダなど、高い透明性と公開情報のアクセスが良好な市場はこの状態だとされるようですが、米国市場と比べて何が違うのか、個人的にはよくわかりません。

3.強度の効率性
定義:公開情報に加えて、非公開の内部情報までが株価に反映されている状態です。
意味:インサイダー情報を使っても、市場を出し抜いて儲けることはできません。
例:理論的には非公開情報までもが価格に反映されている市場を意味しますので、ほとんどあり得ません。

実世界の市場効率性
実際の市場は完全に効率的ではありません。市場には非効率性が存在し、情報が完全には反映されていない場合が多い。これにより、特定の分析方法が時として有効に働く場合があります。だからこそ分析するわけです。分析方法について説明します。

1.テクニカル分析
株価の歴史的な動きをグラフで見て、将来の価格変動を予測しようとする方法です。例えば移動平均線のクロスを利用した取引戦略が挙げられます。株価が短期移動平均線を上回ったら買い、下回ったら売りというシグナルを用います。この分析方法では、弱度の効率性の市場では、過去の価格動向が既に価格に織り込まれているため、過去のデータを基にした予測は新たな利益をもたらすことが困難と、理論的にはされています。多くのトレーダーが同じ情報を見て行動するためです。でも、実際にはよく使われています。

2.ファンダメンタル分析とは?
企業の財務状態や市場の状況を詳しく分析して、株の本当の価値を評価しようとする方法です。半強度の効率性がある市場では、既にすべての公開情報が価格に反映されているため、この分析から得られる新たな利益は期待できないとされます。例えば、株のPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)を用いて、株価が過大評価または過小評価されているかを判断します。

なぜ非効率性が発生するか
1.情報の非対称性:全ての投資家が同じ情報を持っていない場合、情報が持つ人が利益を得ることがあります。例えば、一部のアナリストが特定の企業情報に早くアクセスできる場合、その情報を使って利益を出すことが可能です。

2.感情的取引:多くの市場参加者が恐怖や欲望に基づいて取引を行うため、株価が実際の企業価値から逸脱することがよくあります。2008年の金融危機時や2020年のコロナ時のパニック売りは、市場が情報よりも感情に強く動かされる良い例、とされています。

私は上記の2.感情的取引に興味があるので、少し掘り下げてみます。

行動経済学から考える市場
感情的取引や投資家の非合理的な行動を理解するために、行動経済学と行動ファイナンスという分野があります。人々がどのように経済的決定を下すか、特に非合理的な行動が経済理論や金融市場にどのように影響するかを研究したものです。

1.行動経済学
心理的要因が個人の意思決定にどのように影響するかを扱います。従来の経済学が「合理的な経済人」としての人間を前提とするのに対し、行動経済学は人間の行動が必ずしも合理的ではない、その心理的プロセスを考えます。一般人の私からすると、「合理的な人間なんていないだろ」と思うので、従来の経済学よりもこちらに興味を持った次第です。

2.行動ファイナンス
行動経済学の原則を金融市場の分析に応用した学問です。市場の参加者がどのように感情や誤った信念によって動かされるか、またそれがどのように市場の価格や投資パターンに影響を与えるかを研究します。

行動ファイナンスの主要な概念
1.損失回避(Loss Aversion):損失は利益よりも心理的につらい。なので、合理的ではなかったとしても、利益を得るよりもリスクを避けようとします。例えば2008年の金融危機の際、多くの投資家が自分の株式が急落するのを見て、さらなる損失を避けるために株を売却しました。この大量売却は市場の下落をさらに悪化させ、本来なら保持していれば回復したであろう資産も売却されました。損失回避の行動が市場の過剰反応を引き起こした例です。

2.確証バイアス(Confirmation Bias):投資家は自分の信念や先入観を裏付ける情報を好んで選び、矛盾する情報を無視する傾向があります。例えばテスラ株に投資する投資家が、カリスマ社長の楽観的な将来予測やイノベーションに関するポジティブなニュースだけに注目し、その他のリスク(例えば、製造遅延や法的な問題)を無視する場合です。この確証バイアスにより、投資家は過大評価された株に過剰投資するリスクがあります。

3.ハーディング(Herd Behavior):みんなが、他の人が行う行動を盲目的に真似ることです。例えば、ビットコインの価格が急上昇した時、多くの新規投資家が他の多くの人々が投資しているのを見て、理解をせずに投資を始めました。この群衆心理が株価を実態以上に押し上げます。

4.過信(Overconfidence):投資家が自分の情報や判断能力を過大評価し、過剰な取引やリスクの取り過ぎに繋がります。まあ、株式投資に限ったことではないですけど(笑) 例えば、一時的な運で高リターンを得た投資家が、その成功が自分の分析スキルによるものだと誤解し、過剰なリスクを取ることがあります。バブルの時はこれですよね。みんな儲かって「自分って天才なんじゃないか」って思って、登り詰めてずっこける、という。

市場効率性仮説はあまり興味が出ませんが、その矛盾を人間心理から考える行動ファイナンスは面白いなあと思います。

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