今日のテーマは不平等です。ロンドンに来てからというもの、いろんな不平等を見る機会があります。日本にも不平等はあるのでしょうが、あからさまに違う場面というのは、日本以外でよく見ます。
貿易の歴史的変遷
まずは貿易の歴史的変遷が説明されました。20世紀前半は輸送コストの低下が、後半は関税の引き下げが世界貿易を促進してきました。1930年代から1994年にかけて、関税は約87%も低下。これにより、世界のGDP成長率を上回るペースで貿易が拡大しました。
貿易は国の収入と密接に結びついており、先進国はサービス貿易に強みを持ち、新興市場やドイツなどの国は製造業貿易を牽引しています。また、地理的な影響は依然として大きく、フランスやドイツ、インドなどの貿易パートナーの選択に地理的な近接性が反映されています。
比較優位の原則と貿易のメリット
各国が貿易を行う主な理由として、「比較優位の理論」が挙げられます。デイヴィッド・リカードが提唱したこの理論は、絶対的な生産性ではなく、相対的な生産性の差異が貿易を生むとしています。比較優位に基づく分業と特化が、全ての国に利益をもたらすというのがこの理論の核心です。例えば、米英の歴史的なデータでは、米国が全産業で絶対的優位を持っていても、英国は比較優位のある産業で輸出を伸ばすことができました。
不平等と雇用への影響
しかししかし、貿易は国内の格差拡大をもたらす可能性があります。貿易の利点は国全体にとって利益をもたらすことですが、その利益の分配には不平等が生じることがよくあります。特定の産業が拡大する一方で、他の産業が衰退し、それが雇用と賃金格差を引き起こします。特に技能労働者が需要を増す一方で、非技能労働者は需要が低下して、低賃金に陥る可能性があります。
かつ、ロボットやオートメーションの発達は、低スキルの労働者の仕事を奪いますから、不平等を加速させる要因となり、特に製造業の雇用機会に大きな影響を与えています。例えば、アメリカでは地域ごとにロボット導入が進むことで、賃金低下と失業のリスクが拡大しているそうです。
いわゆる「チャイナショック」による地域経済への打撃
チャイナショックは、中国が製造業分野で国際競争力を強め、先進国(特に米国)における製造業の雇用減少や賃金格差を引き起こした現象を指します。研究によると、中国からの輸入増加は、米国の製造業雇用の減少、賃金水準の低下、労働市場参加率の低下を引き起こしたとされています。
新たな貿易戦争の展開
近年の米中貿易戦争や、2024年の米国とEUの間の関税引き上げ競争など、貿易制限が再び注目されています。背景には、不公正な貿易慣行や戦略的産業の保護といった政策的な動機が存在します。
(例)2024年、バイデン政権は以下の分野で対中関税を大幅に引き上げることを表明:
鉄鋼・アルミニウム:25%
半導体:50%(2025年まで)
電気自動車:100%
バッテリー関連:25%
太陽光パネル:50% EUも同様の措置に追随し、中国は戦略的な報復を宣言
ポピュリズムの台頭
経済が好調な時期には、国民は貿易による低価格の恩恵を享受し、失業率も低く抑えられます。しかし、景気が低迷し、特に非技能労働者の失業率が上昇すると、グローバリゼーションに対する反発が強まります。米国では、中国からの安価な輸入品が国内製造業に与えた影響(「チャイナショック」)が、特定の地域における反グローバリゼーションの動きを助長し、それが2016年の大統領選挙にも影響を与えました。
保護主義の台頭
ここ数年、特に米中貿易戦争以降、各国が「保護主義」にシフトしつつあります。保護主義とは、自国の産業を守るために他国からの輸入品に高い関税をかけたり、輸入を制限したりする政策です。短期的には、例えばアメリカ国内の産業を守ることができますが、長期的には逆効果になる可能性があるとされています。国際通貨基金(IMF)の調査では、関税が高くなると、輸入コストが上がり、消費者の負担が増えるだけでなく、企業の競争力も低下してしまうことがわかっています。
経済よりも政治?
これは私の感想です。上記のように、保護主義は長期的に経済に良くないということは理論上わかっているはずなのに、各国はそれをしない。なぜなのか。①目先の利益を優先せざるを得ないほど自国の経済が弱くなっている。②ポピュリズムの台頭により、不満を持っている層の人気を取ることが求められる。③経済よりも政治を優先している。ということなのかな?と。
なんでこんなことになるかっていうと、結局自国内の貧富の格差も大きな理由なのでは?って思うんですけどもね。なんか自分的にはあまり結論出ないので、ご意見お待ちしています。
世界経済7:グローバル化と不平等 – 貿易戦争から保護主義の台頭へ

コメント