前回の投稿ではロンドンでの就職活動について書きましたが、日本でも実際に就活を経験しましたので、感じたことや学んだことを記録として残しておきたいと思います。
日本の就活事情の全体像
ロンドンと比べると、日本の就職市場は求職者にとってかなり恵まれていると感じました。おそらくこれは、ロンドンだけでなく、世界の多くの国と比較しても同様ではないでしょうか。
ニュースでも「新卒は売り手市場」「転職市場はかつてないほど活発」「35歳・40歳の壁がなくなってきている」といった話題をよく目にします。
経済状況は絶好調ではない、でも相対的には良い
その一方で、「インフレ」「値上げ」「生活苦」「年金減少」「高齢化」「少子化」「関税」といった言葉も日常的に見かけます。つまり、日本経済がものすごく好調かといえば、そうではありません。ただ、他国と比べれば、日本はまだ安定していると感じます。厳しいながらも、相対的に“良い方”だというのが実感です。
就職市場を支えているのは少子高齢化
なぜ日本の就職市場は比較的良い状態にあるのか。
その理由の一つは、日本市場自体の規模感、そして国外で利益をあげている企業の多さにありますが、やはり一番は「少子高齢化」による人手不足だと感じます。人口が減少し、高齢化が進む中でも、一定の市場規模を持つ日本で、モノやサービスを提供するためには企業が人を雇う必要がある。
また、世界で活躍する日本企業も多く、グローバル人材のニーズも高まっています。その結果、新卒は売り手市場になり、転職市場は活況を呈し、年齢による制限も薄れつつあり、給与水準もじわじわと上がっています。
日本市場の特殊性:言語の壁が“守って”くれる
日英の就活を比較して、最も大きな違いだと感じたのは「言語」です。
英語圏では、英語さえ話せれば世界中の人が競争に参入できるため、就活は完全に“世界戦”になります。ビザ、学歴、職歴も重要ですが、まず「英語を話せる人口の多さ」が、競争の激しさにつながっています。
一方、日本の就活は基本的に日本語が前提です。つまり、ライバルは日本語話者に限定されます。この“言語の壁”は、ある意味で日本語話者にとっての強力な参入障壁であり、日本での就活を相対的にやさしくしています。
もちろん、日本での就活も簡単ではありません。ただし、他国と比べれば、条件は良いと感じました。
グローバル企業の多さが、日本語話者の特権を生む
もう一つ、日本市場の特徴的な点は、「グローバルに展開している企業の多さ」です。しかも、それは大手企業に限りません。
イギリスやアメリカで就活をしていると、「こんなに多くの日本企業が海外でビジネスをしているのか」と驚くことがありました。
以前「外国籍を活かすことが差別化につながる」と書きましたが、逆に言えば、日本人が“日本語話者として”世界で活躍できる場面は非常に多いということでもあります。
グローバルに展開していても、常に「日本語ができる人」を求めている。それは、他国の候補者には真似できない、大きなアドバンテージです。
よく「配属ガチャ」という言葉を聞きますが、私はむしろ「日本人という国ガチャ」が、世界的に見て非常に恵まれていると思っています。
LinkedInが使われていない市場、日本
日本の就職市場におけるもう一つの大きな特徴は、LinkedInの使われなさです。イギリス・アメリカ・シンガポール・ドバイの求人に応募すると、1つのポジションに数百人~千人超の応募があるのが普通です。ところが、日本の求人を見ると、応募者数は数人から多くても数十人程度というケースも少なくありません。
これは、単に競争が少ないからというだけではなく、「LinkedInから仕事に応募する」という文化が根付いていないからでもあります。日本では、専用の人材プラットフォームやエージェント経由で転職活動を行うのが一般的です。
また、そもそも多くの日本の会社員はLinkedInに登録していません。理由は、「LinkedIn=転職希望」と見られてしまうことへの恐れです。「あいつ登録したらしいよ、辞めるのかな?」という目線を避けるために、使わないという人も多いようです。
相性のいいエージェントに会えるか
たくさんのエージェントの方々とお話させていただきましたが、本当に多種多様です。エージェントによって考え方、求職者との距離感、仕事の進め方が全く違いますので、多くの方とお話をするのが良いと思います。そのためには、焦らないことが大事だと思います。
辞めてから探すな、見つけてから辞めろ(日本人限定)
これは日本の転職界隈では当然の常識なのですが、私はこの言葉の理解が甘かったです。職探しをしても、ポジションというのは自分のために都合よく空くわけではありません。
新卒であれば対象企業が一斉に全社オープンになり、時間軸まで揃えてくれますから動きやすいですが、転職はそうではありません。仕事を辞めた状態で職を探すと、かなり焦ります。そして、最初の方に来た仕事に飛びついてしまうことになります。
それが自分にとって良い仕事であればいいのですが、焦っていると判断が鈍ることもありますので、十分注意が必要です。
ちなみに、なぜ(日本人限定)と書いたかというと、日本以外の国では「辞めてからゆっくり探す」スタイルが珍しくないからです。日本ではキャリアの空白期間に対する見方が非常に厳しいですが、他国ではそこまで気にされないことも多く、1年かけて探すことも例外ではありません。
最後に
やはり比較は大事です。他人と比較するな、とよく言われますが、比較して負の感情やコンプレックスを持つことが良くないのであって、比較自体はいろんなことを明らかにしてくれます。いつも通り私の独断と偏見による分析でしたが、皆様の暇つぶしになれば幸いです。
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