20年ぶりに就職活動をしました。半年間の活動の中で学んだ就職マーケットについて、記録を残しておきます。まずはロンドン。
就職市場はかなり厳しい
イギリスは2024年に政権交代が起きました。経済状況は芳しくなく、インフレもかなり高い状況が続いています。企業や人は税金の増加を危惧しており、積極的な採用ができる状態ではありません。経済成長もあまり期待できない状況です。
経済云々の前に競争が激しい
景気が良かったら就職市場は簡単になるのかというと、そうではないと思います。なぜなら世界選手権のごとく、人がいろんな国から集まってくるからです。この構造的な問題に気づいたのは、就活がうまくいかずにしばらくしてからのことでした。就活の進め方として、一般的なアプローチとしては、Linkedinや、会社の採用ホームページから申し込むやり方があります。しかし、これがまったく通らない私に限らず書類の選考通過率はかなり低いと思います。なぜかというと、応募のしやすさから、半端ではない数の応募者が職務経歴書を提出するからです。例えば以下のようなお話。
正攻法で行くことの難しさ
これは、イギリスにある、とある金融機関の役員の方から聞いた話です。その会社は全体で200人程度の会社です。夏のインターンを募集すると、毎年5000人以上が応募してきます。それを採用代行会社がAIを使って、1000人まで機械的にふるい落とします。残った1000人の職務経歴書を採用代行会社の人が目で確認して、200人まで絞ります。採用代行会社に絞られた200人を、会社の人事が100人まで絞ります。よって、書類選考通過は100人。絞られた100人を、数日間使って全員面接し、15人がインターンとして採用されます。インターン終了後、10人が採用となります。採用された1年後、3名程度が脱落します。これを毎年繰り返します。
5000人応募してインターンに合格するのが15名ですから、合格率は0.3%です。書類選考ですら、合格率3%です。3%なら、100件応募すれば3件書類通過すると思うかもしれませんが、1番最初のプロセスを考えてみてください。AIが機械的に振り落とします。会社が違っても、機械は同じように判断するでしょうから、落ちる書類はずっと落ち続けるということです。そして、その書類の何が良かったのか悪かったのかのフィードバックもない。
職務経歴書のAI化
会社側で職務経歴書を古い落とすのもAIですが、会社に提出する職務経歴書を作成するのもAIがメインになっているのではないでしょうか。多くの学生が自身の職務経歴書作成をAIにサポートしてもらっていると思います。私は自分で作ったものと、AIに文章を整えてもらったものをどちらも使ってみましたが、どちらも書類選考に通りませんでしたので、何が良くて悪かったのか、こちらもわかりませんでした。
英国就活の2大ハードル
改めて、英国で就職する際の2大ハードルがこちら。言われてみれば当たり前なのですが、当初は「なんとかなるでしょ!」と思っていました。
・ビザはありますか?英国でフルタイムで働くには、学生が卒業後に取得できるGraduate Visaというものを取得するか、会社からSkilled Woker Visaというものを用意してもらうか、です。Global Talent Visaという違ったやり方もあるのですが、まずは上記の2つがメインになります。当初は「職歴・学歴が十分なら、会社からSkilled Woker Visaを発行してもらえるだろう」と考えていましたが、おそらくほとんどの人はそんな待遇は受けられません。なぜなら採用する側としては、「あなたと同じかそれ以上の応募者はいくらでもいるのに、どうしてわざわざお金のかかるVisaを発給してまであなたを採用しないといけないの?」となるからです。よって、AIとかサイバーセキュリティとか、希少人材でもない限り、会社がVisa代を払ってまで欲しいという人は、なかなかいません。よって、Graduate Visaを取得したうえで就活に臨む必要があります。
・英国で働いたことはありますか?もしあなたが正攻法で上位の役職を目指す場合、英国での職務経験、もしくは似たような環境(例えば米国とか)での職務経験を求められることが多いです。これは日本で考えても同じようなことが言えると思います。その国の文化・人・労働慣行・法律・経済等をわかっている人に、組織をリードしてもらうことを求めます。これは英国でも同じです。よって、まずはプレーヤーとして採用してもらうことを目指すのも一つです。
じゃあどうする?
・ネットワーキング:じゃあどうやって就活するのかというと、ネットワーキングをやっている人がほとんどです。日本でいうところのリファラル採用というやつをもっと積極的にやっている感じ。ただしこれはすぐに目に見える成果は出ません。なぜなら会ったその人が自分が希望する仕事をもっているわけではないからです。人から人を紹介してもらいながらネットワークを広げて、どこかのタイミングで良い仕事に巡り合ったり、声をかけてもらうというようなことです。私の場合はエグゼクティブコーチを雇って、シニアマネジメントの方々を紹介してもらいました。
・自分の特性を生かす:これは人によるので本当に難しいのですが、出身国を生かすというのが一番確率が高いように思います。インドの人ならインド企業を狙うということです。差別化するための手段として弱いように思いますが、実際のところ、自分の手札で他人と差別化できるところってそんなに多くないんですよね。なぜなら職歴や学歴については、同じような人がいくらでもいるので。でも、そこに、とある国という要素を入れると競争相手が減ります。
ただし、答えは無し
この数か月間、日本の方から英国就活についてのアドバイスを求められましたが、正直答えがないんです。皆がおなじように苦しんでおり、運の要素に左右されます。よって焦らずに時間をかける、ということにはなりますが、焦りますよね。生活費も高いし。。。
日本就活に比べて、英国就活は厳しいことを実感した半年間でした。
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