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買収、合併、再編2:どうやって買収するか

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1日6時間の集中講義なわけですが、集中力が3時間までしか持ちません。4時間目くらいからぼーっとしてきて、5時間目で集中力がぜろ…。でも中身には興味がある。集中したいけどできない。これが、知的体力ですね。運動の体力も知的体力も、どちらも欲しい…。

現金を出すか、株式を交換するか

買収の仕方としては、買い手が売り手に現金を支払う方法と、買い手が売り手に株式を発行する場合があります。後者の場合、売り手の株式を全部買い取る代わりに、買い手の株式を相手に渡しますので、交換することになります。よって交換比率を計算します。

交換比率の考え方

例えば、

・買い手企業が100株発行していて、買収することが世の中に知れる前の時価総額が500円、知れた後の時価総額が600円だとする。

・売り手企業が80株発行していて、買収することが世の中に知れる前の時価総額が300円、知れた後の時価総額が400円だとする。

・交換レートを仮に「シナジーの50%を付加した形」で計算するとする。

この場合、まずシナジーは買収後と買収前の時価総額の差額になりますので、(600+400)‐(500+300)=200円。そして、これの50%を付加した形、となりますから、200円×50%=100円です。

次に、買い手企業の理論時価総額はというと、元の500円+シナジー100円で600円。これを100株で割ると、一株あたり6円。

次に、売り手企業の理論時価総額はというと、元の300円+シナジー100円=400円。これを80株で割ると、一株当たり5円。

5円÷6円=0.83が交換比率となります。

現金での買収のほうがその後の株価も業績も良い

株式交換と比べると、現金での買収のほうがその後の結果が良いです。これは、現金のほうが買い手が自信=シナジーに確信がある場合が多いからです。現金で渡すっていうことは、リスクは買い手が全部持っています。金額を確定して、それを支払いますので。一方で株式交換というのは、売り手は違う形で株式を持っているわけで、その後その株価がどうなるかはわからないわけですから、売り手もリスクを持っています。過去のM&Aデータが示すところは、「シナジーにより自信がある現金での買収のほうが、成功確率が高い」です。

支払いのリスクを減らすために

買い手として過大に支払うことを避けるために、株価が一定まで上がったらあとで追加で支払うとか、とある業績目標を達成したら追加で支払うとか、何か特別な悪いイベントが起きたら支払わないとか、いろんな手法があります。

売り方の種類

・個別交渉:特定のターゲットを絞って、そこに「買いませんか?」と声をかけます。極秘情報が守られますが、価格を一番高くすることはできません。また、売却の確度を上げたいときにもよいです。

・競争入札:情報をオープンにして価格を競わせますから、一番高い価格で売ることができます。リスクとしては、誰も買い手がつかないとか、買い手同士で談合されて価格が下がる、などがあります。

買い方の種類

・合併:特定のターゲットと個別に交渉をします。米国の場合は50%以上の株主の賛成が必要ですし、売り手企業の取締役会の承認が必要です。

・公開買付:公開市場で株主から株式を直接買い取ります。応じなかった10-15%の株主の株価は強制的に売却されます。

・資産買取:買い手が選択した資産や負債を買い取ります。不良資産や経営リスクを避けることができます。

事業多様化の罠

企業はシナジーを目指して買収したがるのですが、あれもこれもと手を広げているうちに事業が多様化します。多様化するときのメリットは非常に限定的で、リーマンショックのような緊急事態が起こった場合にのみ、リスク分散効果が出たり、借入の利子が低くなったりしますが、基本的にはデメリットしかありません。その理由は、

・事業間の利益が相反する

・非効率な業務や複雑なITシステムの必要性

・間接部門(本社)の肥大化

実際に、過去データから、コングロマリットのメリットは非常に少ないことが示されました。

というわけで選択と集中。その方法は

事業が複雑化してきた場合、2つのやり方があります。

・スピンアウト:グループ内に会社を一つ作って、そこに違う事業を入れる。この場合、親会社は支配権や影響力を持ったままの場合が多いです。株価は、スピンアウトした側もされた側も、上がる傾向があります。経営に余裕のある企業が選択します。

・カーブアウト:他社へ売却します。現金がすぐに必要な企業がこちらを選択します。

金利の水準に大きく左右されるM&A案件たち

金利が急上昇した2023年、世界のM&A件数が激減しました。米国市場でいうと、2021年のM&A件数と比べると40%減。2021年はコロナ後で事業再編が必要だったということに加えて、金利が非常に低かった。金利が低いと正味現在価値にもプラスに働きますから、M&Aも活発になります。今はその逆ですが、M&A業界的にはそろそろ利下げされることが予想されているようです。

買収時の論点まとめ

・価値評価:シナジーを測る

・支払方法:現金か株式交換か

・買収方法:完全支配か部分支配か

・入札方法:友好的か敵対的か

・資金調達:借入、社債、株式発行

で、成功するM&Aとは?

CITI Bankで欧州事業のトップを務めているWilhelm Schulzさんというゲストスピーカーがいらしていたので聞いてみました。成功するM&Aの要因とは?彼の回答は「投資銀行の立場としては正確なバリュエーションといいたい。しかし実際は、買収後の統合プロセス次第。」とのことでした。買収する側として、価値評価も、技術も、お金も、経営者も、素晴らしいのに失敗する場合が多い。同じ買収者でも失敗した例も成功した例もある。なので、結局最後はどのようにPMI:Post Merger Integrationをやるのか、ということにつきるようです。

よし、では、PMI専門で行こうかな。

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