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企業再生8:ビジネスの生態系ピラミッド

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ポジショントーク
企業再生についてはほとんど投稿していないので、いきなり第8回目までとんでしまいました。第8回目の授業では、企業再生をテーマにした交渉を行ったんですね。この議論、演劇か何かを見ているのかなあと思うくらいに面白くて。中身が面白いというよりも、それぞれの置かれた立場で、人々がどうふるまうのかが面白かった。ただのシミュレーションだし、どの役目に割り振られるかはランダムですから、誰もそれぞれの立場には思い入れが無いわけです。それでも、人はその立場に従って動くことを改めて実感しましたし、この投稿の題名にあるように、どこに所属するかで優位性が決まることも見せつけられました。

シミュレーションの前提
登場人物は、①困難な状況に陥った事業会社と、②事業会社に出資するプライベートエクイティ、③事業会社にお金を貸している大手銀行、④事業会社にお金を貸している中小銀行、⑤事業会社を助けるべく起用されたコンサル、⑥事業会社の債権を安く買おうと狙うヘッジファンド、です。

議論の大まかな内容
まず、事業会社とコンサルが議論を仕切るわけです。困難に陥っている主人公と、それを助ける助っ人。他の登場人物は、「私たちが満足するようなものを提供できるんですか?」って感じで、事業会社とコンサルを見ている。事業会社がどうなろうが構わないヘッジファンドと、倒産しても最優先でお金が返ってくる大手銀行は静かに議論を見守ります。一方でつぶれたらお金が返ってこないプライベートエクイティと中小銀行は企業再生の重要性を説きます。

立場と強さ
当然のことですが、どのような交渉においても「立場が強い人間は黙っていて、立場が弱い人間はよくしゃべる」です。この議論で一番必死に話すのは事業会社、その次がコンサルです。なんで事業会社の立場が弱いのだろう、と考えました。もちろん、事業がうまく行っていれば立場は弱くないのでしょうが、一企業としてうまく行っているとかうまく行っていないとかではなくて、ビジネスの生態系上、そもそも立場が弱いのだろうなあ、と改めて思いを巡らせました。

ビジネスの生態系ピラミッド
ビジネスの構図において、企業の資金調達や再生プロセスにおける交渉力には明確なパワーバランスが存在します。とりわけ、バイサイドとセルサイドの立場の違いは、事業会社、サプライヤー、PE(プライベートエクイティ)ファンド、銀行、投資家といった関係者がどう位置づけられるかを理解する手がかりになります。

あえてセルサイドとバイサイドに分ける
金融界にセルサイドとバイサイドという言葉がありますが、これをあえて事業会社まで含めて拡大解釈してみます。
セルサイド、つまり「何かを売る側」は、バイサイドに対して交渉上の劣勢に立たされることが多いとされています。例えば事業会社はモノやサービスを打っているし、再建を支援するコンサルは情報を打っています。セルサイドは、資金を提供する銀行やPEファンドやヘッジファンド等の、会社を金で買う(貸すも含める)バイサイドに対して劣勢です。

その背景には、バイサイドが持つ「資金提供」という強みが関係しています。投資家や貸し手は、資金の流動性を武器に、企業の再建や運転資金の供給をコントロールする力を持ち、特に経営が不安定な企業に対しては強い交渉力を発揮するためです。再建過程においても、企業のリスクが増すほど資金調達が困難となり、結果的に事業会社は再建計画の自由度を制限されるケースが多々見られます。

バイサイドとセルサイドの構図はビジネス全体の縮図
バイサイドが強く、セルサイドが弱いという構図は、ビジネスの生態系全体における「強さの順序」にも関連しています。サプライチェーンを見た場合、サプライヤーや完成品メーカー、サービス提供会社といった事業主体は、上流の資本運用を行う銀行やPEファンドに比べて利益率が低く、業績のボラティリティも高くなる傾向があります。特に、需要の変動や市場の影響を受けやすい企業は、その価値を安定的に維持することが難しく、資本提供者であるバイサイドの支配を受けやすい立場にあります。

バイサイドとしての投資家の地位
事業の成長やイノベーションという視点を脇に置き、金銭的な観点からのみビジネスの力関係を考えると、投資家に近い立場であるバイサイドの優位性は明らかです。企業の経営リスクを管理し、短期的な利益を追求する傾向が強いバイサイドのプレイヤーは、資産の流動性を確保しつつ、多様化されたポートフォリオによりリスクを分散できるため、事業会社よりも優位な位置に立つことができます。このため、資本提供者であるバイサイドがビジネス生態系の上の方に地位を築いていると言えます。

「夢」ではなく「金」を追求する現実的な選択肢
ビジネスにおける「力の構図」を考えると、理想や夢を持ちながらも資本の論理を優先する場合、投資家やPEファンドといったバイサイドに近い立場がより有利であることが見えてきます。事業運営に必要な資金を自由に操り、企業のリスク管理や再生支援を主導するバイサイドは、資本主義における一つの頂点として位置付けられるでしょう。

ビジネススクールの多くの学生がプライベートエクイティに行きたい理由がわかってきました。上記のような力関係をはっきり意識している人もいるだろうし、いない人もいるでしょう。ただ出来るだけ投資家に近い方に行ったほうが金銭的に有利になる。だから、投資家に近いプライベートエクイティやヘッジファンドが儲かる。でも若いときから一足飛びにそこには行けないから、まずコンサルや投資銀行に入る、その後さらに上流を目指す、という流れなのでしょうね。

(金融系の学生が目指す典型的なパターン:ファイナンス専攻で大学卒業→投資銀行かコンサルでお金を稼ぐ→MBAでハード・ソフトスキル向上&ネットワーキング→プライベートエクイティやヘッジファンドへ就職してお金を稼ぐ→引退して投資家として悠々自適に暮らす)

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