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買収、合併、再編1:株式の共有所有から考える「会社は何のために?」

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集中的に講義を受けるブロックウィークが始まりました。私が選択した科目この投稿のタイトルのとおり。いや、めちゃくちゃ面白かった。

誰が会社を所有しているのか?
85か国の28000社のデータによると、このうちの50%の会社は、家族が所有権を持っています。40%の会社は、機関投資家が所有権を持っています。そして、上位1000社のデータを取ると、上場している会社の割合はだいたい10~25%。多い国で、4分の1しか上場していないのです。我々は日ごろから、公開されている上場企業しかほぼ見ていませんから、株式市場にいる会社が世の中の会社の大半のように感じてしまいます。が、違う。世の中は我々が知らない会社であふれている、ということです。

欧州は家族経営が多い
もう一つデータが示されて、少数の株主が株式の大半を所有している割合を見ました。欧州の多くは30%~50%くらいの会社が、少数の株主によって所有されており、一番少ないのはアメリカの14%。日本は22%で、かなり少ない方でした。

上場会社数の減少
米国では年々、上場企業数が減っております。90年代後半を頂点として、そこから2016年くらいまでに、約40%くらいの会社が公開市場からいなくなっています。なぜか?会社として無くなったのもありますが、M&Aによる吸収合併が増えたからです。

特定の株主による複数の競合企業のシェア所有
インデックスファンドの流行により、大手の投資家会社は時価総額に連動した投資をします。その結果、一つの投資会社が、複数の競合企業の大口株主になるという状況が発生しました。例えば石油会社。Blackrock社はシェル、BP、エクソン、フィリップス66という同じ業界の会社の大口株主になっています。さて、その結果、どんなことが起きるのでしょうか。競争が阻害されるかそれとも促進されるか?顧客にとって良いか悪いか?まだその結論は出ていませんが、規制当局によって注視されています。

とにかく増えているM&A
1985年から現在まで、M&Aの件数も金額もずっと伸び続けています。なぜ?株主価値を最大化するための手法として有効だと考えられているから、です。会社はだれのものか?日本人の感覚だと、顧客・従業員・取引先・地域・株主・金融機関等、「様々なステークホルダー」という感じだと思います。が、誰が所有しているのか?から考えると、株主なわけです。ということで、株主を喜ばす必要があります。どうやって?企業価値を上げて、株価を上げる。そのためには自社の独力ではきつい。ならM&A。

いやいや、M&Aは本当に企業価値を上げるのか?
企業価値が上がる結果を株価の上昇とします。買収者、被買収者、その産業全体、という切り口で株価の上昇を見ると、どの期間で見ても、買収者の株価は減少、被買収者の株価は上昇、産業全体では微増、です。なので市場全体にとっては良い。あとは、買収した側の企業価値が上がるような正しい買収をしないといけません。

正しい買収とは?
・シナジーがある場合。シナジーとは、技術向上、人材レベル向上、コスト削減、利益の増加等です。
・経営者を取り換えて意思決定の質を高められる場合
・経営の実態よりも株価が安い場合
これらはすべて、株主価値の向上につながります。
一方で、間違った買収とは、規模やシェアの拡大のみを図り、企業価値が上がらない場合です。

M&Aが労働者に与える影響
一番ショッキングなのはメンタル疾患が増えるという事実。仕事を失う場合もあるでしょうし、失わなくても自分がこれからどうなるのかという不安や、変化そのものが、ストレスを急激に高めます。
ちなみに、高度な技術をもっている労働者は、M&A後に給与が上がる傾向があります。そうでない場合、誰かに仕事を奪われたり、ITによって置き換えられたりします。

買収価格を適切に計算する答えはない
買収価格をどのように評価するか?ディスカウントキャッシュフロー(将来得られるであろう現金を今の価値に置き換える)や、類似会社比較法(その市場で上場している似ている会社の市場価格と比較する)等、色々とあるのですが、どのように計算したってかまいません。答えはありません。

上場してるなら時価総額で買っちゃえば?
計算したって答えがわからなくて、しかもその会社が上場しているなら、その時の取引価格=時価総額で買っちゃえばいいんじゃないか、という考えもあります。が、ここには何が足りていないか?シナジーがないんです。M&Aをするのはシナジーがある場合。そしてあなたがとある会社を買収したい場合、あなたは何かしらのシナジーがあると判断しているから。であれば、今の時価総額とは違う金額になります。

売り手が有利=勝者の呪い
売り手が買い手の提案に合意するのはどんな場合でしょうか?自分が見積もる価格よりも高い価格を出してきた場合、ですね。もちろん、とにかく手放したくて仕方がないので安値でも売る、という場合はありますが。売り手はこの先何が起きるのか、どんな問題があるのかを知っているわけです。情報の非対称性があります。では買い手はどうするか?想定できる下限の買収価格からスタートする必要があります。まあ、これを日本企業にやると「そんな無茶な価格からスタートするやつは信用ならん」という理由で破談になるかもしれませんけど(笑)

それでもやっぱり売り手が有利
もう一度念押しですが、ほとんどの場合、売り手が有利です。上場企業の株価を見ると、買われる企業=売り手の株価は大きく上がりますが、買い手の株価はむしろ下がる可能性があります。買収後の期間を長くとったとしても、ね。(注記:景気が良くなって株価があがる分は計算に含まれていません)

シナジーのない買収が多い
買収で株価が上がらない。それなら買収なんてしないほうがいいじゃないか、と思います。シナジーの無い買収が多いからです。もちろん経営者は考えに考えて買収するわけですが、実際はシナジーがない買収が多い。

企業価値の分類
買収による企業価値向上について数式で見てみます。企業価値=買収前のもともとの企業価値+シナジーによる企業価値向上+コントロールによる企業価値向上。コントロールって何?これは、買われる企業自身の効率化向上による価値向上です。例えば買収されることになって、古いITシステムが刷新されて効率が大きく向上した場合。これはシナジーではなく、コントロールと呼びます。

議決権付き株式とガバナンス
株式買収や企業経営で出てくるもう一つの議論が議決権付き株式とガバナンスの問題です。例えばグーグルでは2種類の株式を発行していて、片方は議決権あり、片方が議決権なし。議決権は創業者が持っています。するとどうなるのか?議決権を持っている株主の好きなように会社をコントロールされるという、ガバナンス上のリスクがあります。

うーむ、きわめて面白かったですね。株式市場のダイナミズムや、非上場企業の多さ=チャンスの多さ、買収による産業再編や進化。M&Aの世界は奥が深い…。

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