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ゲーム理論5:信頼と長期的な便益

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さーて、楽しいゲーム理論も今日で最終回でした。社会の仕組みを簡単な数式で説明するというこの理論は、物事の見方に新しい視点を与えてくれました。

Tit-for-tat戦略
最初は協力し、その後、相手の直前の行動に対して同じ行動を取るという戦略です。例えば、相手が協力した場合、自分も協力し、相手が裏切った場合は自分も裏切ります。この戦略の特徴は何か?寛容さと誘導性です。一度裏切られても、相手が再び協力すれば、すぐに協力で応じる柔軟性があります。

現実世界では
例えば国際関係において、国が互いに協力的な交渉を行う際に用いられます。相手国が協力的な姿勢を見せた場合には協力を続け、挑戦的な行動を取った場合には対等な反応を示すことで、相互の信頼と協力の維持を図ります。

Grim戦略
「Grim」(無慈悲な)戦略は、最初は協力することからスタートしますが、相手が一度裏切ると、その後は無条件でずっと裏切り続けるという戦略です。この戦略は非常に強力な抑止力となり得ますが、一度裏切られると修復が難しいです。

現実世界では
経済制裁や軍事的な対立でしょうか。一方の国が他方に対して何らかの侵害行為を行った場合、厳しい制裁を加え続けることで、再発防止を図ります。

戦略の違い
Tit-for-tat戦略は柔軟で寛容なアプローチをとるため、長期的な関係構築や信頼の構築に効果的です。一方でGrim戦略はより厳格で、一度の裏切りで長期にわたる不信を生むため、短期的な抑止や厳しい制御が必要な場面で用いられることが多いです。

協力には信頼が必要だ
一回限りのゲームで、囚人のジレンマのような設定では、互いに裏切る戦略がナッシュ均衡となることが多いです。この場合、互いに協力する選択肢がそれぞれのプレイヤーにとって最適であっても、裏切りによる一時的な利益を追求するインセンティブが強いため、協力すことが難しくなります。

反復ゲーム
反復ゲームでは、プレイヤーが繰り返し相互作用します。ここで重要なのが、未来の利得を現在の行動に影響させる割引因子です。割引因子が小さい場合(つまり、未来の利得を現在の利得とほぼ同等に重視する場合)、プレイヤーは長期的な報酬を最大化するために協力を選択する可能性が高くなります。

しかし、割引因子が大きい(未来の利得をあまり重視しない)場合、裏切りが起きると、協力的になるのは困難です。つまり、即時の報酬を重視する場合、一度の裏切りが連鎖反応を引き起こし、全体として非協力的な結果になります。

現実世界では
環境保護協定:例えば、パリ協定などでは、各国が長期的な地球環境保護の利益を重視するという前提です。割引因子が小さいと、各国が未来の環境状態や経済状態を現在の利益とほぼ同等に評価します。すると、国々は即時の経済成長を犠牲にしてでも環境保護に協力するインセンティブが強くなります。たとえ一国が協定から逸脱しても、他国が継続して協力することで、長期的な利益を追求し、最終的に逸脱した国も協力に戻る可能性が高まります。

短期的な貿易戦争:短期的な貿易戦争や経済制裁は、割引因子が大きい場合の典型例です。ここで割引因子が大きいとは、即時の政治的、経済的利益が未来の損失よりも重視される状況を指します。例えば、国Aが国Bに対して高い関税を課すと、国Bも報復として同等の措置を取る可能性が高いです。このような状況では、短期的な競争がエスカレートしやすく、双方が即時の損失を避けようとするために長期的な貿易関係の悪化を招くことがあります。繰り返される対立は、互いに裏切り続けるナッシュ均衡に陥りやすく、協力に至るのが難しくなります。

反復ゲームでは「Retaliation(報復)」と「Credibility(信頼性)」が大切です。協力を促進し維持するメカニズムや、協力を崩す行動の理解が必要だからです。

Retaliation(報復)
報復は、あるプレイヤーが他のプレイヤーの裏切りや協力しない行動に対して意図的に反応する戦略です。報復の主な目的は、短期的な損失を受け入れることにより、相手に長期的な協力の重要性を示すことです。つまり、相手が裏切ることのコストを増大させることで、将来的に協力的な行動を取るように誘導します。

Credibility(信頼性)
信頼性は、あるプレイヤーの脅威や約束が信じられるかどうか、実際に履行されるかどうかの度合いを表します。信頼性が高いと、他のプレイヤーはその脅威や約束を真剣に受け止め、それに基づいて自らの戦略を調整します。報復の脅しを行う場合、その脅しが信頼性を持っていることが重要です。つまり、報復が約束された場合に実際に実行される保証がなければ、その脅しは効果を持ちません。

関係性
報復が有効に機能するためには、それが信頼性を持って実行される必要があります。報復の信頼性が確保されると、相手プレイヤーは裏切る前にその結果を真剣に検討するでしょう。これにより、相手が裏切るリスクを考慮し、協力を続けるインセンティブが増すことになります。

協力の一形態としての共謀
共謀は、競争者同士が市場での競争を避け、価格設定、市場の分割、入札の操作などで秘密裏に協力することを指します。共謀は反競争的行為と見なされることが多く、多くの国で法律によって禁止されています。共謀の目的は、通常、競争による利益圧縮を避け、参加者全員の利益を最大化することです。

共謀と報復
共謀が成功するためには、参加者間で高いレベルの信頼性が必要です。すなわち、全員が合意を守ると信じられている必要があります。もし一方の企業が共謀から逸脱して競争を始めた場合、他の企業は報復として価格を下げるなどして対抗する可能性があります。このような報復は、共謀の枠組み内で逸脱を抑制する役割を果たします。報復の脅威があることで、全員が共謀を守るインセンティブが強まります。

共謀と信頼性
共謀の持続性は、参加者が約束を守るという信頼性に大きく依存します。各企業が共謀における役割を果たすという信頼がなければ、共謀は崩壊します。したがって、共謀を維持するためには、参加者が互いに監視し、合意を守ることを確認するメカニズムがしばしば必要です。また、共謀に参加することの長期的な利益が、短期的な逸脱による利益よりも大きいと認識されている必要です。

いやあ、頭の体操にピッタリでしょ。ほんのりと記憶しておきます。

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